くすぶりOL日記

いつの間にか母になった30代OLが仕事や子育て、ファッション、アラサー友達の生態などを気ままに綴ります

三浦春馬くんの訃報から、改めて「僕のいた時間」を観てみた話

(ネタばれありですので、ご了承ください)

春馬くんの死をニュースで知ったときは、本当に大きな衝撃を受け、まさかと思った。

私は春馬くんのファンと名乗るのにはおこがましく、これまでいくつか彼の出演したドラマなどを観ていた程度だったのだが、彼の美しい容姿、高い演技力に魅了された一人であったことは間違いない。ドラマに映画に歌手活動にと大活躍中だった彼がなぜ亡くなってしまったのか…ただでさえ、コロナのニュースで欝々とした気分だったこともあり、何日もの間、彼が自殺したというニュースが私に重くのしかかった。

しばらくしてふと、6年前に観た、春馬くん主演の「僕のいた時間」というドラマを観たくなった。難病ものの重い内容のドラマだった、という記憶が強かったのだが、春馬くんが命を、そして生きることを扱ったこのドラマを今、改めて観たくなったのだ。

このドラマは春馬くん演じる、普通の大学生だった澤田拓人の就職活動中から20代半ばまでを描いている。社会人1年目でALSを発症した拓人は、できることが病気によって徐々に奪われていく。その中で恋人や家族、友人との関わりや、仕事、生きがい、日々の目標を見つめ直し、彼自身はもちろん、彼の影響を受けた周囲の人々も少しずつ変化していく。

内容の重さに春馬くんが自殺したという現実も重なって7話あたりで挫折しそうになったが、何度も涙しながら最終回までたどり着くことができた。実にいろいろと考えさせられるドラマで、少し文章化して整理したくなったので、つらつらとまとまりのない文章になあるが、お付き合い願いたい。

 

・拓人の「仕事人生」を見て考えさせられること

このドラマはもしかしたら純愛もの、と分類されてしまうのかもしれないが、拓人の就職活動から退職までを描いていて、彼の仕事人生を描いたお仕事物語、という側面もある。ドラマならではの過剰演出もあるが、40社、50社と採用試験を受けて落ちまくるのがふつうだった、リーマンショック後の厳しい就職状況が色濃く表れており、就活を苦に自殺する者まで出る。ここまで若者に精神的負担をかけ、夢を奪っていくこの社会は何なんだろう、と憤りを覚え、自分の就活を思い出して胸が痛くなった。拓人の最後のほうの面接のシーンでは、彼に感情移入してしまって自然と涙が出た。

ドラマでは正規・非正規問題も浮き彫りになる。新入社員の拓人の指導に当たる先輩は非正規雇用だ。先輩ははじめ、拓人にかなりつらく当たっている。非正規雇用のベテランが、何も分からない正社員に仕事を教えなければならないという皮肉。先輩のイラつきも分からないではない。

そんな先輩に対して怒るでもなく、めげることもなく、必死に食らいついて仕事を覚えようとし、休日も自社の商品のカタログを見たり、本屋でインテリア雑誌を買って勉強する拓人の姿がまぶしい。社会人歴10年を迎えすっかりくたびれ社員になりつつある私に、彼はフレッシュな新人だったころの気持ちを思い出させてくれ、頑張ろう、という気持ちにさせられた。

そして、病気を発症してからの拓人の頑張りと、それに応えて病状に応じた仕事を拓人に与え続ける会社の温かさには、たびたび涙した。店頭に立てなくなったらバックヤードに、それも難しくなったらお客様にお手紙を書く仕事に、それも難しくなったらPCで広告制作を行う仕事に…と会社は絶え間なく彼に居場所を与えてくれる。そして、一人でトイレに行くのも難しくなった拓人が退職を願い出るシーンで、最初は拓人に冷たかった例の非正規雇用の先輩が口添えをして、在宅勤務とという選択肢を与えてくれるシーンは特に泣けた。

ダイバーシティといえばいいのか、様々な立場・状況の人が活躍でき、社会とつながる場があるということの大切さ、そして働くことの尊さを教えてくれるドラマだった。

 

・恵について

多部未華子ちゃん演じるドラマのヒロイン、恵は優しくて芯の強い女性だ。婚約を破棄してでも病気の拓人のもとに戻り、懸命に介護する姿を見て、6年前は恵がいい子すぎてかわいそう、という風に思ってしまったのだが、私自身も既婚者となった今、斎藤工演じる繁之との結婚を破棄した恵の気持ちはとてもよく分かる気がした。好きだった元カレが、実は病気のせいで彼女に迷惑をかけまいとして別れを告げていた、と分かっても、そのまま別の人と結婚できるだろうか。いやできない。(でも私だったら最後まで拓人の介護をする決心もつかない気がする…そこが芯の強い恵とダメダメな私の違いである)

 

・恵の「貧困問題」

ドラマの後半では全く話題に挙がらなくなってしまうが、この恵の貧困問題が序盤では気になった。母子家庭で育った恵は経済的にゆとりがなく、600万の奨学金という名の借金を背負って就活に臨み、内定が得られずフリーターになる。当然奨学金は返しきれるわけがない。その後も介護の非正規雇用を経て、正規雇用となるが、高収入だとは思えず、奨学金の返済は終わらないままになっているのではないか。さらに拓人の介護も発生し、いつまでも恵が貧困問題から抜け出せなくなっているのでは…と気になったが、拓人の実家がお金持ちだから何とかなったと想像したい。(夢のないお金の話ですみません)

 

・春馬くんと拓人

このドラマは命を扱った作品に取り組みたいという本人の企画により実現したと聞く。それもあって拓人が春馬くんそのものと被って見えることがある。第一話で自殺した同級生の葬式に参列した拓人が「死ぬの怖くなかったのかな…」とつぶやくなど、自殺を髣髴とさせられてドキッとするシーンが何度かある。春馬くんも生前ノートに役作りのことなどを書き残していたというが、拓人も自分の思いやその日起こったこと、目標などを一生懸命ノートに書き綴っている。そして、生きるのが怖い、とつぶやく…。

 

泣き、叫び、体の不自由な姿を演じるその春馬くんの演技力に圧倒され、病状の進行にハラハラさせられ、そして春馬くんの美しさにみとれた全11話だった。

改めて、こんな素敵な俳優さんがいなくなってしまったことを悲しく思う。

私のブログらしからぬ、まじめで暗い投稿になってしまったけれど、色々な感情が沸き起こってきて、長々と書き連ねてしまった。

ドラマの中で拓人が常にノートに自分の目標を書いているのが良かった。がたがたの字になっても最後まで生きる目標を見失わなかった拓人。私も目標を見つけてみようかな。